日本イギリス哲学会賞

本学会創立40周年を記念して「日本イギリス哲学会賞」が新設されました。この賞の目的は、本学会員のイギリス哲学に関するすぐれた研究業績を顕彰するとともに、本学会に対する社会的認知度の向上をめざすことにあります。会員の皆さまには、「日本イギリス哲学会賞規程」ならびに下記の推薦要領をご覧のうえ、ふるってご推薦いただきますよう宜しくお願い申し上げます。

推薦要領

後日、ご案内いたします。

日本イギリス哲学会賞規程

1. 目的および名称

日本イギリス哲学会は、会員のイギリス哲学に関するすぐれた研究業績を顕彰するとともに、本学会に対する社会的認知度の向上をめざし、「日本イギリス哲学会賞」(略称「学会賞」)を設ける。

2. 授賞の対象および時期

2-1. 選考開始年度に先立つ2年度間に刊行された単著とする。
2-2. 原則として、2点以内とする。
2-3. 選考は隔年でおこなう。

3. 選考方法

3-1. 理事会は、会員に、授賞候補作の推薦を依頼する。
3-2. 会員は、所定の書式と期日にしたがい、授賞候補作を理事会に推薦する。
3-3. 理事会は、推薦された候補作にたいして、「選考委員会」を組織するとともに、選考委員長を任命する。選考委員会には非学会員をふくめることができるものとする。
3-4. 選考委員の任期は当該理事会の任期と同じとする。
3-5. 選考委員長のもとで選考委員会が所定の期日までに選考をおこない、理事会に選考結果を報告する。理事会は、選考結果の報告をうけ、受賞作を決定する。

4. 賞の授与および公表

総会において、選考委員長が選考結果の報告をし、会長が受賞者に賞状を授与する。
本人からの公表辞退の申し出がないかぎり、これを「学会通信」、学会ホームページなどを通じて公表する。

5. 附則

5-1. 本規程は、2016年4月1日から施行する。
5-2. 本規程の改正は、理事会の議を経て、総会の承認を得るものとする。


第1回日本イギリス哲学会賞・選考結果

選考委員長 只腰親和(中央大学)

2017年9月17日に行われました「日本イギリス哲学会賞」選考委員会において、下記の書物を第1回日本イギリス哲学会賞受賞作に決定しましたので、ここに報告いたします。

Ryu Susato,  Hume’s Sceptical Enlightenment, Edinburgh University Press,2015

本書は18世紀イギリスを代表する思想家のひとりであるデイヴィド・ヒュームを対象にして、彼の思想を書名のタイトルにあるように「懐疑的啓蒙」と枠付けして、その諸著作を哲学、政治、経済、宗教等の諸側面から分析したものです。啓蒙思想家としてのヒュームが著者によって「懐疑的」と特徴づけられるのは、その懐疑主義が認識論にのみ限定されるのではなく、宗教論はもとより政治論や社会論にも及んでいること、古代ギリシャ、ローマの哲学者で懐疑的とみなされていたエピクロスやルクレティウスの伝統を引いていることによります。

こうした前提で、本書の2,3章ではヒュームの懐疑的啓蒙の理論的な基礎になる観念連合と意見について論じられています。4章から7章では各論として、奢侈(4章)、国家との関係を中心とする宗教論(5章)、政体論を中心とする政治論(6章)、歴史観としての循環史観(7章)がそれぞれ分析され、8章ではJ.S.ミルやバーク等の18世紀後期から19世紀初頭にかけてのヒューム評価が紹介されています。

ヒュームは著者も言うように、「多面的、多義的な思想家」でしたが、その思想家の哲学、宗教、政治、経済、歴史といった多方面に及ぶ著作、論文を巨細にわたって丹念に渉猟した上、全体を懐疑的啓蒙として総合した点で本書は評価できます。またヒュームに関する個別論点ごとに、ヒューム自身の諸著作だけではなく、同時代や過去の関連する思想家の一次文献が広範に参照され、さらに内外の二次文献にも過不足なく言及されている点もすぐれています。達意の英文で、世界への研究の発信という面でも貢献が大きいとみなされます。

これらの諸点から本書は、日本イギリス哲学会賞に値するものと考えます。

選考委員(50音順)
秋元ひろと、有江大介、犬塚元、久保田顕二、只腰親和(委員長)