学会通信(バックナンバー)

注記:39号(2002年)から52号(2015年)までのバックナンバーはこちら。バックナンバーの本Webサイトへの統一作業を順次進めています

学会通信 第55号(2018年11月)

新会長挨拶

第22期の会長を務めることになった一ノ瀬です。1990年代前半から本学会理事を務め、20年以上が経ちました。そろそろフェードアウトをと思っておりましたが、最後の責務と捉え、2年間精一杯努めたいと思います。会員の皆様のご協力を、なにとぞどうかよろしくお願いいたします。

本学会は、「哲学会」と名乗っておりますが、ご承知のように、狭い意味での哲学・倫理だけでなく、イギリスと通称される地域の思想展開に即した、政治思想、経済思想、法思想、歴史、文学など、幅広いフィールドの研究を視野に収めた、ある種学際的な研究集団です。このことは、しかし、イギリスの思想展開を改めて眺め返すならば、事柄のおのずとなりゆく様態であると言えるでしょう。会員から多くの関心を寄せられる哲学者デイヴィッド・ヒュームを例に取るならば、彼が、哲学・倫理に一時代を画す仕事を成し遂げたことは言うまでもありませんが、同時に、政治・経済思想、そして歴史の分野にも太い稜線を刻み残したジャイアントであることもまた周知のごとくです。そして実は、そうした事情は、ヒュームに限らず、イギリス哲学史に名を残す多くの哲人に当てはまります。バートランド・ラッセルに至っては、数学原理から幸福論、そして平和運動まで、その活動舞台は大きく振幅しています。事ほどさように、もともと哲学そして哲学者たるもの、森羅万象に目を向け、ときには文筆を越えて実践にまで至る、躍動的な志向性をうちに秘めたるものなのです。私どもイギリス哲学会は、とりわけイギリスの思想動向に沿いながら、こうした広い意味での哲学・思想の躍動性を自身に照らし返し、その意義を、その深みを、明るみにもたらし、それを社会に発信することによって、思考することの大切さを啓発していくという使命を帯びている、それが私の基本理解であります。学術研究は、専門的研究者が切磋琢磨して遂行していく仕事ですが、研究者内部の解釈論争などだけに終始したのでは説明責任を果たせません。外部へと波及させ、応分の社会的責任を果たしていく必要があります。日本イギリス哲学会もまた、そうした責任を担い、そして、辞典編纂などを通じて一定の貢献を果たしてきました。

むろん、今後のさらなる展開が求められる点もあります。一つには、研究対象として論じられる哲学や思想が、どちらかというと17世紀から20世紀初頭までにほぼ集中していて、中世以前、そして20世紀後半から21世紀までの、彼の地の動態に対する関心がやや手薄である点、いささか気になります。この点は、今後徐々に埋められていく必要があるのではないでしょうか。第二に、「イギリス」を謳いながら、必ずしも英語を直接使用した活動への関わりが十分であったとは言いにくい、という点があります。この第二点については、私自身、日本イギリス哲学会が主催または共催する研究大会を、恒常化させるかどうかはさておき、イギリス本国において開催する、という可能性を模索しております。少なくとも、そうした活動への足がかりを付けたい、というのが私の希望でありヴィジョンです。もはや、日本語だけで学術研究を続けるということは、賛否はあれ、事実として正当化されにくい状況だからであります。

いずれにせよ、学会運営は、会員の皆様のご理解とご協力、そしてなにより事務局の先生方のご尽力あってのものです。事務局業務を担当されている竹澤祐丈理事、森直人幹事、武井敬亮幹事にお礼を申し上げつつ、以上、ご挨拶としたいと存じます。

杖下隆英先生を偲んで

一ノ瀬正樹(武蔵野大学)

本学会元会長で、東京大学名誉教授の杖下隆英先生が、2017年11月にご逝去遊ばされました。

私は、杖下先生とはとても長い交流をさせていただきました。記憶する限り、東京大学教養学部において、杖下先生が理科系学生のための「論理学」の講義をされていたときに、私は文科系でしたが、自発的に聴講させていただいたのが最初です。1970年代後半のことです。非常にクリアなご講義で、哲学者らしく、論理哲学の話題にもふんだんに触れておられたことが強く印象に残っています。私は、そのとき自分で書き留めたノートをいまも保管しています。ときどき眺め返して、基本中の基本の項目を改めて確認するのに使用させていただいています。

その後、私は大学院生になって本郷キャンパスの哲学研究室に所属しておりましたが、駒場キャンパスで開催された杖下先生の演習にもしばしば顔を出しておりました。とりわけ、バークリの『視覚新論』翻訳の話しが、杖下先生を中心に立ち上がろうとしていたとき、その企画と呼応的に杖下先生が『視覚新論』を読解する演習を開いていて、それに出席したことが強い印象として残っています。その演習の後、一度杖下先生に食事のお誘いを受けて、渋谷の居酒屋に行ったことがあります。そのとき、生まれて初めて黒ビールをいただきました。その美味しさ、そして、杖下先生と親しくお話しできたこと、忘れることができない思い出です。

そうした交流は、その後もたびたび続きました。いつでしたか、学会出席のため新幹線に乗り、たまたま杖下先生と遭遇したことがあります。杖下先生から、食堂車に行かないか、とお声がけいただき、食堂車でご一緒したこともあります。いまは新幹線の食堂車はありません。テーブルに置かれた飲み物がガタガタ揺れていた、あの光景。セピア色に染まる追憶の断片です。また、1997年の米国モントレーで開催された国際ヒューム学会にて、杖下先生のご講演を拝聴したときの、あの熱気、いまでもまざまざと蘇ります。そしてなにより、杖下先生との思い出の中で、最大の場面は、2002年の香川大学で開催された日本イギリス哲学会研究大会のときのことです。帰りの飛行機とモノレールをご一緒しました。そのとき、「あなたとは昵懇だから」と言われたのです。このような言葉は、私の人生の中でもそう与えられるものではありません。照れくさいような、体が熱くなるような、不思議な感覚を覚えたものです。

その杖下先生が、いまはおられません。近くにいた私は、思い出すことを躊躇してしまいます。あの笑顔を思い浮かべると、胸が苦しくなってしまうからです。時間というのは、本当に冷淡なものです。だれもが、時間によって老いさせられ、最後を迎えさせられます。ヒューム研究、論理哲学の研究、いまでも後進の研究者たちを熱く刺激するお仕事を果たされた杖下先生。いまは、彼岸にて再会することを念じ、深い哀悼の意を捧げるばかりです。

齋藤繁雄先生を偲んで

一ノ瀬正樹(武蔵野大学)

本学会名誉会員で、東洋大学名誉教授の齋藤繁雄先生が、2018年2月にご逝去遊ばされました。

齋藤先生は、東洋大学文学部哲学研究室における、私の前任の教授であられました。私が東洋大学哲学研究室に専任講師として着任したのが1991年4月、その直前の3月に齋藤先生は定年を迎えられたのであります。齋藤先生については、それ以前からよく存じ上げておりました。日本イギリス哲学会のいろいろな研究集会を通じて、そして、齋藤先生のお仕事の核心をなすヒューム宗教哲学のご研究を通じて、です。とりわけ、齋藤先生が、同じく東洋大学で、社会学部に所属されていた福鎌忠恕先生との共訳で刊行されたヒューム宗教論集三部作、『宗教の自然史』、『自然宗教に関する対話』、『奇跡論・迷信論・自殺論』は、齋藤先生が果たされたお仕事の核心だと思われます。ヒューム宗教論は、実は、『人間本性論』に劣らず、いやそれにも増すほどの比重でもって、ヒューム哲学の根幹を形作っていることは、ヒュームを勉強しはじめるとすぐに気づきます。その方面の重要性に早くから着目し、後続の研究者たちへの道標を残してくださったこと、後に続く一人として改めて感謝を表明したいと存じます。

その後、私は東洋大学を離れましたが、名誉教授となられていた齋藤先生から、途中になっていたヒューム『人間知性研究』の訳業について、手助けしてほしい、という光栄な依頼をお受けいたしました。私にとって訳業は苦しいことだらけで、どうしようか迷いましたが、中身の重要性と、他ならぬ齋藤先生からのご依頼ということで、勇躍お引き受けすることにいたしました。それからが大変です。合間を見て、翻訳をして、さらに推敲をして、ついに2002年に私がイギリス・オックスフォードでの在外研究の機会を得たときまで仕事が尾を引くことになりました。オックスフォードのクライストチャーチの見える部屋で、翻訳作業を続けていたことをまざまざと想起します。その甲斐あって、ようやく完成し、齋藤先生と私との共訳書として刊行に至りました。その後、ビーチャム版との対応付けなど、改訂をして今日に至っております。その過程で、齋藤先生と直接お目に掛かる機会はありませんでした。お手紙をいただいて、翻訳についての指示を受けるなどしただけでした。そうこうするうち、齋藤先生がお亡くなりになられたという知らせを受けたのです。

人と人との結びは、固有の色合いとともに表象されます。私にとって齋藤先生は、なにより東洋大学の、あの古い校舎の色彩とともにあります。大学紛争の時代の名残が感じられる、東京の私学の立て看。白山界隈の伝統的な商店街。いまや東洋大学は近代的な校舎に生まれ変わり、周囲にも新しい店が出来て、往時の面影を偲ぶことはなかなか難しくなりました。学会の折に、いつもは謹厳な面持ちの齋藤先生が笑顔で私に話しかけてくれた、在りし日のあの面影を偲びつつ、ここに心よりの追悼の意を捧げたいと存じます。

第42回総会・研究大会報告

日本イギリス哲学会第42回総会・研究大会は、2018年3月28日(水)・29日(木)の両日、武蔵野大学有明キャンパスにて開催された。開催校責任者の青木裕子会員および武蔵野大学のスタッフの皆様に支えられ盛況であった(約120名の参加者)。

1日目午前の総会では、会長挨拶、開催校挨拶に続いて、議長に中釜浩一会員が選出され、各種議案の審議が滞りなく進んだ。また第10回日本イギリス哲学会奨励賞の発表がおこなわれ、大谷弘会員に対して賞の授与がおこなわれた。併せて第1回日本イギリス哲学会賞の発表が行われ、壽里竜会員に賞が授与された。総会に続いて、西本照真武蔵野大学学長による記念講演「東洋思想における幸福観の諸相」がおこなわれた。

1日目午後には、まずセッション「コモン・センスとコンヴェンション――18世紀英米思想における人間生活の基盤――」(司会:大谷弘、報告者:相松慎也・青木裕子・石川敬史)が開催された。リード哲学のキーワードである「コモン・センス」が18世紀英語圏における幅広い思想の中で再検討され、活発な議論が交わされた。また今大会では本セッションと並行して4名の個人研究報告が行われた。

さらに1日目夕方には、シンポジウムⅠ「イギリス哲学研究とデジタル・ヒューマニティーズ―思想史の事例を手がかりに―」(司会:梅田百合香・犬塚元、報告者:福田名津子・壽里竜)が開催され、この主題をめぐる現在の動向や今後の可能性と問題点について討論された。

1日目終了後、武蔵野大学ロハス・カフェ有明において懇親会がおこなわれ、打ち解けた雰囲気の中、分野を越えて親睦を深める本学会ならではの風景が見られた。

2日目午前には、8名の会員による個人研究報告と充実した議論がおこなわれた。2日目午後は、シンポジウムⅡ「近代日本とイギリス思想―「明治150年」をきっかけに―」(司会:岩井淳・下川潔、報告者:平山洋・山田園子・深貝保則)がおこなわれ、近代日本とイギリス思想の関わりとその問題性が深く問われ、また議論された。

第1回日本イギリス哲学会賞選考結果

只腰親和(選考委員長)

2017年9月17日に行われました「日本イギリス哲学会賞」選考委員会において、下記の書物を第1回日本イギリス哲学会賞受賞作に決定しましたので、ここに報告いたします。

Ryu Susato, Hume’s Sceptical Enlightenment, Edinburgh University Press, 2015.

本書は18世紀イギリスを代表する思想家のひとりであるデイヴィド・ヒュームを対象にして、彼の思想を書名のタイトルにあるように「懐疑的啓蒙」と枠付けして、その諸著作を哲学、政治、経済、宗教等の諸側面から分析したものです。啓蒙思想家としてのヒュームが著者によって「懐疑的」と特徴づけられるのは、その懐疑主義が認識論にのみ限定されるのではなく、宗教論はもとより政治論や社会論にも及んでいること、古代ギリシャ、ローマの哲学者で懐疑的とみなされていたエピクロスやルクレティウスの伝統を引いていることによります。

こうした前提で、本書の2、3章ではヒュームの懐疑的啓蒙の理論的な基礎になる観念連合と意見について論じられています。4章から7章では各論として、奢侈(4章)、国家との関係を中心とする宗教論(5章)、政体論を中心とする政治論(6章)、歴史観としての循環史観(7章)がそれぞれ分析され、8章ではJ.S.ミルやバーク等の18世紀後期から19世紀初頭にかけてのヒューム評価が紹介されています。

ヒュームは著者も言うように、「多面的、多義的な思想家」でしたが、その思想家の哲学、宗教、政治、経済、歴史といった多方面に及ぶ著作、論文を巨細にわたって丹念に渉猟した上、全体を懐疑的啓蒙として総合した点で本書は評価できます。またヒュームに関する個別論点ごとに、ヒューム自身の諸著作だけではなく、同時代や過去の関連する思想家の一次文献が広範に参照され、さらに内外の二次文献にも過不足なく言及されている点もすぐれています。達意の英文で、世界への研究の発信という面でも貢献が大きいとみなされます。

これらの諸点から本書は、日本イギリス哲学会賞に値するものと考えます。

選考委員(50音順)

秋元ひろと、有江大介、犬塚元、久保田顕二、只腰親和(委員長)

第10回日本イギリス哲学会奨励賞選考結果

2017年9月23日、東洋大学にて開催されました「日本イギリス哲学会奨励賞」選考委員会において、下記の論文を第10回「日本イギリス哲学会奨励賞」の受賞作とすることに決定しましたので、ここに報告いたします。

大谷 弘(おおたに ひろし)

‘Wittgenstein on context and philosophical pictures’ (Synthese, Vol. 193(6))

本委員会では、『イギリス哲学研究』第40号掲載論文および一般応募論文の中から、奨励賞の資格要件を満たす3編に関して、(1)論述の説得力、(2)論述方法の堅実さ、(3)先行研究への目配り、(4)議論の独創性、(5)将来の研究への発展の可能性等について慎重な検討を行い、大谷会員の上記論文が本年度の受賞作にふさわしいとの結論に達しました。

大谷会員の論文は、ウィトゲンシュタインの哲学的方法論、とくに、哲学的議論が陥りがちな概念的混乱を解きほぐす手法の特徴を、言語の理解が文脈に影響を受けること(context-sensitivity)に注目して明らかにしようとするものです。そのさい強調されるのが、ウィトゲンシュタインの哲学批判の非独断的な性格であり、その観点から、ハッカーらの「標準的解釈」が厳しく批判されます。ウィトゲンシュタインの哲学批判の軸は哲学者が「哲学的な像」にとらわれる過程の解明であり、その過程の大本にあるのが、文脈を無視した「モデル」への固執であることが、論文の後半では述べられます。「標準的解釈」や、それに従う一般的な後期ウィトゲンシュタイン理解によれば、日常的な語用法を逸脱してなされる哲学的言語使用は、正しい語用法の観点から一方的に退けられるのですが、本論文は、ウィトゲンシュタインの議論は、問題の哲学的言語使用を一方的に退けるのではなく、あくまで会話的な性格のものであり、それへの疑問は、解明、すなわちそれを理解可能とする文脈の提示を求める呼びかけであることを指摘します。哲学的な言語が空転に陥るのは、語が用いられる典型的な文脈についての想定が、本来の文脈を離れたところで固定したモデルとされることであり、こうして生成するのが「哲学的な像」であることを本論文は明らかにしています。

選考では、言語の正しい使用についての固定した直観による独断的な議論という、通説的な理解に代わる、言語使用の具体的な状況に注目する会話的で開かれた探求という、斬新な後期ウィトゲンシュタイン解釈が、周到な議論を伴って示されていることを高く評価し、大谷会員の論文を受賞作とすることに決定しました。

若手会員支援策を設置するまで

とても残念なことに、我が国では哲学・思想系の学問の研究は、ますます厳しい状況に追い込まれつつあります。大学教員数や予算の削減、学部の統合など、さまざまな形での縮小をせまられ、その結果、大学院生はもとより、大学院を修了した多くの若手研究者が経済的に不安定な状態で研究を続けざるを得ない境遇にあります。そのために、学会に所属して自らの研究を発表したり、意見交換をしたりすることも、ままならぬことになっています。このことは、我が国の哲学・思想系の学問の発展にとって大きな障害になっています。

このような背景もあって、本学会においても数年前から、若手研究者を支援するために学会として何かする必要があるのではないか、という声が理事の間で高まってまいりました。そこで、私が会長になって1年ほどたった2017年の春から、若手会員支援策に関するワーキンググループを設置し、具体的な支援策を考案してもらうことにしました。そのワーキンググループで考え出された案は、何度も理事会で長時間にわたり検討を加えて、修正を重ねました。その結果、(1)若手会員の学会費減額、(2)個人研究発表のための旅費の補助、(3)公募セッションのための旅費の補助、という3つの支援策を実施することが理事会で決定され、2018年の3月の総会で承認されました。(2)と(3)は、本年度から開始され、すでに、2019年の3月に広島国際大学で開催される大会での個人研究発表について7名、公募セッションについては3名の若手会員への旅費の補助が9月の理事会で承認されております。(1)に関しては、2019年度から開始される予定です。

これらの支援策の詳細ならびに応募方法は、学会からの配布物や学会ホームページで会員の皆様にすでにお知らせしておりますので、本学会の活性化のためにも、また、ひいては我が国における哲学・思想系の学問の発展のためも、なるべく多くの方に活用いただきたく心よりお願い申し上げます。

第43回総会・研究大会について

第43回総会・研究大会は、2019年3月29日(金)・30日(土)の両日、広島国際大学広島キャンパスにて行われます。同大学には、村上智章会員が所属され、大会開催校責任者としてご尽力いただいております。

1日目には、総会、会長講演、2つの公募セッション、シンポジウムI「甦るフィルマー─近代社会哲学の源流再考―」(司会:青木滋之・小林麻衣子、報告者:古田拓也・小城拓理)、2日目には、個人研究報告(12名)、シンポジウムII「ケインズ・ウィトゲンシュタイン・ハイエク―不確実性の時代の秘められた知的連関─」(司会:久米暁・佐藤方宣、報告者:小峯敦・大谷弘・太子堂正称)が予定されています。また、1日目夕刻に懇親会が開催されるほか、31日(日)には大会校によるエクスカーションも企画されています。

詳細については2018年2月のプログラム送付の際にご案内いたします。

事務局より

ご挨拶

『学会通信』第55号をお届けいたします。事務局をお預かりしてはや半年あまり。ルーティンをこなしつつ、一ノ瀬会長や理事のみなさまのご理解に基づいて、賞味期限切れになりつつある慣行や手続きを見直しています。その一環として、週1勤務の非常勤職員を雇用し、事務局の仕事の一部を担当していただいています。ボランティア・ベースで学会を運営することが難しくなっている現在、事務局担当者に過重な負担をかけない事務局や学会の運営を模索したいと思っています。その効果につきましては、2年間の試行期間の最後に検証する予定です。

また成田前会長時代にワーキンググループを設置して長期間議論を行ってきた若手会員の支援策が本年度から開始されています(その前提としての学会誌の電子公開も遡及分を含めて完了しました)。該当する会員のみなさまには、この制度を利用して、ご自身の研究活動の深化をとげられますことを心より願っております。

今後は、学会のガバナンス改革(役員任期の検討を含む)や、その国際展開のための制度づくりに傾注し、より活発な学会となるような議論のお膳立てをしていきたいと思っております。

会員のみなさまからも忌憚のないご意見を頂ければ幸いです。(竹澤)

会費納入のお願い

会費未納の方は、本年12月末までに振込をお願いいたします。年会費は6,000円です。2年分(12,000 円)以上の未納の場合には、来年3月末の学会誌の送付が停止され、役員選挙の選挙権・被選挙権を失います。更に、5年分(30,000 円)以上の滞納の場合には、自然退会となります。くれぐれもご注意ください。

学会通信 第54号(2017年11月)

第41回総会・研究大会報告

日本イギリス哲学会第41回総会・研究大会は、2017年3月27日(月)・28日(火)の両日、南山大学名古屋キャンパスにて開催された。開催校責任者の奥田太郎理事および南山大学のスタッフの皆様に支えられ盛況であった(参加者115名)。

1日目午前の総会では、会長挨拶、開催校挨拶に続いて、議長に平山洋会員が選出され、各種議案の審議が滞りなく進んだ。また、第9回日本イギリス哲学会奨励賞の発表がおこなわれ、梅澤佑介会員、豊川祥隆会員に対して賞の授与がおこなわれた。総会に続いて、成田和信会長による会長講演「欲求充足と幸福」がおこなわれた。
1日目午後には、シンポジウムⅠ「近代寛容思想の射程とその意義」(司会:梅田百合香・関口正司、報告者:川添美央子・下川潔・山岡龍一)が開催された。近年の世界情勢のなかでますます重要性を増しつつある寛容思想について活発な議論がなされ、本学会ならではのシンポジウムとなった。

1日目の大会終了後、南山大学リアンカフェにおいて懇親会がおこなわれ、研究にとどまらない様々な話題に話の花が咲き、会員相互の親睦が深められた。2日目午前には、7名の会員による個人研究報告がおこなわれ、いずれの報告でも活発な議論がおこなわれた。2日目午後は、シンポジウムⅡ「功利主義と人間の尊厳」(司会:奥田太郎・児玉聡、報告者:小畑俊太郎・山本圭一郎・中井大介)がおこなわれた。近現代のイギリス思想における大きな潮流である功利主義思想と人間の尊厳の観念の関係をめぐる学際的な議論がなされ、質疑応答もふくめて熱のこもったシンポジウムとなった。

第9回日本イギリス哲学会奨励賞・選考結果

伊勢 俊彦(選考委員長)

2016年9月24日、東洋大学にて開催されました「日本イギリス哲学会奨励賞」選考委員会において、下記の二論文を第9回「日本イギリス哲学会奨励賞」の受賞作とすることに決定しましたので、ここに報告いたします。

・梅澤佑介(うめざわゆうすけ)
「市民の義務としての反乱――ハロルド・ラスキによるT・H・グリーンの批判的継承」
(『イギリス哲学研究』第39号掲載論文)

・豊川祥隆(とよかわよしたか)
「ヒュームの関係理論再考――関係の印象は可能か」
(『イギリス哲学研究』第39号掲載論文)

今年度は、奨励賞への一般応募論文はなく、『イギリス哲学研究』第39号掲載論文の中から、資格要件を満たす三編が候補作となりました。本委員会では、候補作のそれぞれについて、(1)論述の説得力、(2)論述方法の堅実さ、(3)先行研究への目配り、(4)議論の独創性、(5)将来の研究への発展の可能性等について慎重な検討を行い、梅澤氏と豊川氏の上記二論文が本年度の受賞作にふさわしいとの結論に達しました。

まず梅澤氏の論文は、ラスキが、イギリス観念論を徹底的に批判する反面で、イギリス観念論の提唱者であるグリーンから「抵抗の義務」の観念を受け継ぎ、「反乱の義務」として主張していることに着目します。そして、ラスキによる「一元的国家論」から「多元的国家論」への転回が、グリーンの主権論を批判しながら、主権と抵抗についての新たな考え方のなかに「抵抗の義務」を位置づけ再生する試みを軸とするものであると指摘します。グリーンとラスキは、ともに主権の基礎を強制力ではなく被治者の意志に見出します。グリーンは、国家と被治者が道徳的に一体であることを前提としながら、抵抗を、国家が本来の目的から逸脱した場合に、あるべき国家のあり方を取り戻す市民の義務として構想します。これに対し、ラスキは、政治の次元と倫理の次元を区別することによって、国家の強制力による同意なき支配の可能性に目を向ける一方、国家以外の諸団体も、被治者の意志にもとづく主権性を認める多元的国家論を提唱し、市民に、国家との道徳的一体性に回収されない批判(「反乱」)の役割を課します。本論文は、これまで注目されてこなかったグリーンとラスキの批判的継承関係が、ラスキの多元的国家論の形成において果たした役割を明らかにした、思想史研究に対する重要な貢献と言えます。他方、委員会では、タイトルに掲げられた「反乱」が論文のまとめの部分で後景に退き、やや不明確な締め括り方になっているという、叙述方法の欠点も指摘されました。

次に豊川氏の論文は、観念の十全さの基準を、そのもとになる印象への遡上によって求めようとするヒュームの特徴的論法を複合観念の一種とされる関係の観念に当てはめるとき、いかなる解決が可能かを検討します。まず、関係の観念を構成するものとして、関係づけられる対象に加えて、関係を成立させる事情が必要であるとされ、ヒューム自身は明示的に論じていないとしても、そのもとになる印象についての問いが不可避であると述べられます。ヒューム自身の議論の中で、関係の印象への問いに最も近づいていると思われるのが、必然的結合の観念が、心の被決定の印象に由来するとする議論ですが、この議論の検討は、逆に、関係の把握が多くの場合にはっきりした感じを伴わないこと、また、心の被決定の印象に由来する観念が、いかにして必然的結合を表象するような内容を持ちうるのかという問いを提起します。これらの問いに対しては、関係の観念の場合には、印象を直接提示することによって観念を明晰化するというより、観念が見出される経験の提示によって観念の表象内容の確認を可能とするという方略をとるべきであり、そのさい、心の被決定のようなある感じがあれば、その経験を指示するための印として機能するであろうし、そのような感じがない場合も、穏やかな情念に類する印象を想定することができるという解決が提案されます。委員会では、例えば存在の観念や信念については、存在する対象や信じられる対象の観念と別個の知覚はないとされており、関係の観念についても同様の議論が可能ではないかという、本論文の問題設定に対する疑問も出されましたが、主張の鮮明さと議論の明解さを評価する意見が多数を占めました。

このように両論文については欠点の指摘や内容についての疑問もありましたが、いずれも斬新な問題設定で独自の論点を打ち出しており、さらなる研究についてその発展を奨励するに値するという結論に委員会として達し、二論文をともに受賞作にすることといたしました。

第42回総会・研究大会について

第42回総会・研究大会は、2018年3月28日(水)・29日(木)の両日、武蔵野大学有明キャンパスにて行われます。同大学には、青木裕子会員が所属され、大会開催校責任者としてご尽力いただいております。

1日目には、総会、記念講演、公募セッション、シンポジウムⅠ「イギリス哲学研究とデジタルヒューマニティーズ――思想史の事例を手がかりに」(司会:犬塚元・梅田百合香、報告者:福田名津子・壽里竜)、2日目には、個人研究報告(13名)、シンポジウムⅡ「近代日本とイギリス思想――「明治150年」をめぐって」(司会:岩井淳・下川潔、報告者:平山洋・山田園子・深貝保則が予定されています。また、1日目夕刻に懇親会が開催されます。

詳細については2018年2月のプログラム送付の際にご案内いたします。

個人研究報告と論文の公募のお知らせ

各種の公募は、例年、以下のようにおこなわれます。希望者は下記の要領で期日までに申し込んでください。

(A)各部会研究例会報告
申込締切 各部会研究例会の3ヶ月前
報告時間 60分
申込先  各部会担当理事または事務局
*2016-2017年度部会担当理事
関東:伊藤誠一郎、矢嶋直規
関西:久米 暁、竹澤 祐丈

(B)研究大会個人研究報告
申込締切 9月15日(消印有効)
報告時間 35分、質疑応答15分
申込先  事務局
申込方法 報告要旨(報告要旨(題目・氏名・所属を除いて1600字以内、英語の場合は 390 words以内)を添えて、メール(添付ファイル)または郵送)

(C)『イギリス哲学研究』掲載論文
申込締切 6月30日(消印有効)
申込先  事務局
申込方法 オンライン(2018年度の公募論文のオンライン申し込み方法については現在検討中ですので、決定次第HPに掲載します)

公募要領・執筆要領については、『イギリス哲学研究』最新号の「『イギリス哲学研究』執筆に関する諸規定」に従ってください。
公募論文は、匿名の査読者2名により審査されます。査読者は、編集委員会が編集委員を除く会員のなかから選出し、応募者名を伏せて秘密厳守のうえ審査を依頼しています。よって、応募者名、 論文名、査読者名は、編集委員会と事務局以外には非公開となっています。編集委員は、応募者にも査読者にもなれません。査読者の審査結果に基づいた編集委員会の判断により、理事会において掲載論文を決定後、投稿者に審査結果を通知いたします。

事務局より

会費納入のお願い

会費未納の方は、本年12月末までに振込をお願いいたします。年会費は6,000円です。2年分(12,000 円)以上の未納の場合には、来年3月末の学会誌の送付が停止され、役員選挙の選挙権・被選挙権を失います。更に、5年分(30,000 円)以上の滞納の場合には、自然退会となります。くれぐれもご注意ください。

役員(理事・会計監査)選挙結果について

選挙管理委員会のご尽力により、滞りなく開票が行われ、当選理事15名と会計監査2名、さらに当選理事の推薦による10名の理事も決定されました。前回よりも有効投票総数が27%程度増加しました。次回も皆様の積極的なご投票をお願いいたします。

今後の学会運営について

試験的に運用しております学会メーリング・リストの本格的な稼働に向け、準備が進んでおります。電子化委員会のご尽力により、バックナンバーを含む学会誌の電子化の作業も進んでおりますので、遠くない時期に皆様にもご利用いただけるかと思います。(太子堂)

学会通信第53号(2016年11月)

新会長挨拶

第21期の会長を務めることになりました。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

本学会が創設されてから今年で 40年になります。それを記念して、坂本達哉前会長を中心にした前期理事会の議論をへて、新たに「日本イギリス哲学会賞」が設立されました。その目的は、本学会員のイギリス哲学に関する優れた研究業績を顕彰するとともに、本学会に対する社会的認知度の向上をめざすことにあります。この賞の第1回目の審査のために、この夏に会員の皆さまから推薦を募りました結果、四つの著作が推薦されました。いずれも、本学会員の研究の水準の高さを示す優れた著作です。すでに、選考委員会を組織し、再来年3月の会員総会での選考結果の発表をめざして、選考が開始されております。また、創立40周年事業としては、この他に、本年3月の学習院大学での研究大会において、「イギリス哲学研究の21 世紀」というシンポジウムと、会員の皆様からの公募による四つのシンポジウムが実施され、いずれも成功裏に終わりました。

ご承知のように我が国では、人文社会系の学問の研究ならびに教育は、ますます厳しい状況に追い込まれつつあります。とくに、哲学、思想、歴史、文学、芸術などの分野は、大学教員数や予算の削減、学部の統合など、さまざまな形での縮小をせまられ、これまでの研究の成果を維持発展させ、そ れを多くの学生に教育を通じて伝えていくことが難しくなってきております。このようなことは、ものごとをその根本的な原理まで遡って深く考察する態度や、既存の見方や「常識」をさまざまな視点から検討しなおすという姿勢を、人々から奪ってしまい、その結果、社会がより良い方向に進むことを阻むことに
なるのではないかと危惧しております。このような状況を鑑みますと、本学会の活動を通して、思想、歴史、文学、芸術など含めた大きな意味でのイギリス哲学に関する我が国における研究を少しでも活性化し、その成果をさまざまな仕方で発信していくことは、その重要性を増していると思われます。その意味でも、まずは、新設された「日本イギリス哲学会賞」を軌道にのせ、会員の皆さまがなるべく多く参加してくださるような研究大会の在り方を模索することに努めてまいりたいと思っております。

ただ、現在の学会事務の業務方法を変えないかぎり、学会の活動を活性化するための事業が増えれば、事務局の負担が増えることにもなります。今期は、太子堂正称事務局長、板井広明幹事、川名雄一郎幹事の献身的な努力によって、事務局が運営されていますが、学会事務業務を遂行するために事務局担当会員の貴重な研究時間が大幅に削られていることもたしかです。したがって、学会の活動の活性化を図りながら、同時に事務局の事務量を少しでも軽減することが重要であると考えております。

以上のことを心にとどめながら、会長として微力ながら力を尽くしてまいりたいと思っておりますので、会員の皆さまには、ご協力とご支援のほど宜しくお願い申し上げます。


第39回総会・研究大会報告

日本イギリス哲学会第40回総会•研究大会は、2016 年3月28日(月)•29日(火)の両日、学習院大学目白キャンパスにて開催された。開催校責任者の下川潔理事および学習院大学のスタッフの皆様に支えられ盛況であった(参加者86名)。

1日目午前の総会では、会長挨拶、開催校挨拶に続いて、議長に星野勉会員が選出され、各種議案の審議が滞りなく進んだ。 総会に続いて、酒井潔学習院大学教授による記念講演「ライプニッツにおける『正義』の概念」がおこなわれた。

1 日目午後には、シンポジウムI「イギリス哲学研究の21世紀」(司会:只腰親和、柘植尚則、岩井淳、報告者:神野慧一郎、泉谷周三郎、田中秀夫、坂本達哉)が開催された。学会創立40周年を記念したこのシンポジウムでは、世代をこえて活発な意見交換がおこなわれ、イギリス哲学研究や学会のあり方について考える貴重な機会となった。

1日目の大会終了後、学習院大学創立百周年記念会館内で懇親会がおこなわれ、 研究にとどまらない様々な話題に話の花が咲き、会員相互の親睦が深められた。

2日目午前には、5名の会員による個人研究報告がおこなわれ、いずれの報告でも活発な議論がおこなわれた。2日目午後には、まず臨時総会が開催され、10名の指名理事、および新理事によって互選された新会長がそれぞれ承認された。

その後、シンポジウムIIとして、学会創立40周年を記念し公募によって選ばれた以下の 4 つのシンポジウムが並行しておこなわれた。(i)「イギリス経験論とは何なのか 『ロック、バークリ、ヒューム』の系譜」(司会:伊勢俊彦、一ノ瀬正樹、報告者:青木滋之、中野安章、田村均)、(ii) ‘Hume on the Ethics of Belief ‘ (司会:渡辺一弘、報告者:Hsueh Ou、萬屋博喜、Axel Gelfert)、 (iii)「イギリス思想における常識と啓蒙の系譜 18 世紀スコットランドから 20 世紀ケンブリッジヘ」(司会:青木裕子、報告者:片山文雄、大谷弘、野村智清)、(iv)「イギリスの複  合国家性と近代社会認識ー 歴史叙述を中心に」(司会:竹澤祐丈、報告者:竹澤祐丈、森直人、木村俊道、佐藤一進)。会員の多様な研究テーマ•関心を反映したさまざまなトピックに ついて密度の濃い報告•質疑応答がおこなわれ、学会創立40周年にふさわしい企画となった。


第41回総会・研究大会について

第41 回総会•研究大会は、2017年3月27日(月)•28日(火)の両日、南山大学名古屋キャンパスにて行われます。同大学には、奥田太郎理事が所属され、大会開催校責任者としてご尽力いただいております。

1  日目には、総会、会長講演、シンポジウムI「近代寛容思想の射程とその意義」(司会:関口正司、梅田百合香、報告者:川添美央子、下川潔、山岡龍一)、2日目には、個人研究報告(3会場、7名)、シンポジウムII「功利主義と人間の尊厳」(司会:児玉聡、奥田太郎、報告者:小畑俊太郎、山本圭一郎、中井大介)が予定されています。また、1日目夕刻に懇親会が開催されます。

会場、参加申込等の詳しい内容については、2017年 2月のプログラム送付の際にご案内いたします。


第8回日本イギリス哲学会奨励賞・選考結果

一ノ瀬 正樹(選考委員長)

2015年9月19日、慶應義塾大学で開催されました日本イギリス哲学会奨励賞選考委員会におきまして、2015年度の日本イギリス哲学会奨励賞の候補作の論文2点につき、論文の独創性、論旨の明快さや説得性等の観点から慎重かつ厳正に審議いたしましたが、該当作なしという結論に達しましたので、ここにご報告申し上げます。


個人研究報告と論文の公募のお知らせ

各種の公募は、毎年、以下のように行われます。希望者は下記の要領で期日までに申し込んでください。

(A)各部会研究例会報告
申込締切各部会研究例会の3ヶ月前
報告時間60分
申込先各部会担当理事または事務局
(*2016-2017年度部会担当理事
関東:伊藤誠一郎、矢嶋直規
関西:久米 暁、竹澤 祐丈)

(B)研究大会個人研究報告
申込締切9月15日(消印有効)
報告時間35分、質疑応答15分
レジュメ1600字以内(題目・氏名・所属を除く)、英語の場合は390ワード以内
関東:伊藤誠一郎、矢嶋直規
関西:久米 暁、竹澤 祐丈)
申込先事務局
申込方法メール(添付ファイル)または郵送

(C)『イギリス哲学研究』掲載論文
申込締切6月30日(消印有効)
申込先事務局
申込方法郵送

公募要領•執筆要領については、『イギリス哲学研究』最新号の「『イギリス哲学研究』執筆に関する諸規定」に従ってください。

応募論文の審査は以下のようにおこなわれています。応募論文は、匿名の査読者2名により審査されます。査読者は、編集委員会が編集委員を除く 会員のなかから選出し、応募者名を伏せて秘密厳守のうえ審査を依頼しています。よって、応募者名、 論文名、査読者名は、編集委員会と事務局以外には非公開となっています。また、編集委員は、応募者にも査読者にもなれません。採否は査読者の審査結果に基づいた編集委員会の判断により、理事会において掲載論文を決定後、投稿者に結果を連絡いたします。


井上公正会員の死を悼む

神野  慧一郎(大阪市立大学名誉教授)

本学会名誉会員井上公正会員は、昨年2015年8月1日逝去された。最近の若い会員の方々は、井上会員をよく御存じでないかもしれないが、かれこれ30年ほどお付き合いをしてきた私のようなものにとっては、井上会員がこの世を去られたことは一つの衝撃である。というのも、故人がつい最近まで御老齢にも拘わらず(御生誕は1921年)、本学会の大会のみならず地方部会(関西部会)にも、少し体調の良くないときでも愚痴を言うでもなく、静かに出席しておられたことは、敬愛すべき故人のお人柄、すなわち自らの志すところへむかってたゆまず努力する誠実なお人柄を如実に示すものであり、まさに以て範とすべきであると常々思っていたからである。

井上会員は本学会創設時以来の会員であり、1984年から1992年まで本学会の理事を務めて頂き、2003年には名誉会員に推挙されておられる。

職歴は、東北大学卒業の1949年7月の名古屋大学文学部助手に始まり、1953年に奈良女子大学文学部講師として関西に移られ、以後は同大学で、助教授ついで教授として勤務され、1984年3月定年退官された。その後も奈良大学で教鞭をとられ、また皇学館大学にも参与としてお勤めになられた。

井上会員はほぼ一貫してジョン•ロックの寛容論の研究に一生を捧げられたが、名古屋大学時代には、ルネサンス•ヒューマニズムやプラトンの国家論の研究も行っておられる。これらの研究は、しかし、ある一貫性に基づいており、主著である『ジョン•ロックとその先駆者たちイギリス寛容論研究序説 』(1978)に反映されている。すなわち、この著書の第一章は、「トマス•モアの寛容論」であり、ヒューマニストの寛容論を取り上げたものである。そして議論はイギリスにおける宗教改革と寛容の問題、ついで17世紀前半の寛容思想、そしてロックの寛容論へと展開されている。

イギリスにおける寛容論はもちろん宗教上の寛容論がその源流であろうが、しかし寛容論は、人間の自由の問題と無関係ではない。この点についての故人の見解は、おそらく退官時の最終講義の草稿と思われる論考、「ロックの「自由」論に関する一考察」(『研究年報』28、奈良女子大学、1984)に述べられている。故人は、ロックの自由論の要とも言うべき、」七つの概念を取り出している。「力能」、作用力能がindifferency(志向可能的中立)の状態にあること、欲望がある意味で意思の決定に関わるということ、理知、理知に基づく意志の自由、天賦の権利(一切の国家権力に先立って存在する権利)、国家  権力の恣意的干渉の抑止などの概念分析がそれである。そして、この分析の最後の点は、主著「はしがき」冒頭に述べられているご自身の経験(社会主義者ではないかという不当な嫌疑により自由の国、米   国へのヴィザが得られなかった)に関係がある。

温厚にして篤実、しかも一貫した思索を貫徹された誠実な井上名誉会員の死去は、私の人生をまた更に寂しいものとした。


山下重ー先生の死を悼む

泉谷  周三郎(横浜国立大学名誉教授)

山下重一先生は、2016年4月1日に胃ガンで亡くなられた。享年90歳。先生は、2014年4月に脳梗塞で倒れ、左半身に麻痺が残ったが、奇跡的に自宅で読書と執筆ができるまでに回復された。昨年暮、「脳梗塞で倒れたが、執筆活動ができるようになったのでお会いしたい」との御手紙をいただき、2016年1月4日の午後、三鷹の先生宅で2時間半ほど話し合うことができた。そのとき、先生の研究意欲はきわめて旺盛であっただけに、その死が惜しまれる。

山下先生は、1944年に東京大学経済学部に入学し、卒業後、法学部の政治学科に学士入学し、1951年法学部を卒業し、都立石神井高校の教諭となった。1965年4月、國学院大学の法学部の助教授となり、政治思想史や西洋政治史などを担当した。清廉で温厚な人柄で、院生や学生を指導しながら、イギリス近代の政治思想と日本におけるそれらの受容を可能な限り深く理解しようと努めてこられた。山下先生は、政治思想研究を深める継起となったものとして、1973年5月にトロント大学で開催された「ミル父子記念学会」に甲南大学の杉原四郎先生と一緒に参加し、ロブスン教授、ハンバーガー教授らと知り合ったこと、わが国においてもミル研究者の交流のために定期的な研究会を開催することの必要性を痛感したことなどをあげている。杉原先生と山下先生により1975年に「ミルの会」が生まれた。また両先生は、編者として『J.S.ミル初期著作集』全4巻を計画し、刊行された。山下先生は、1980年から日本哲学会の常任理事となり、研究大会の企画や学会誌の編集などを担当しながら、学会では司会や報告者として活躍された。

山下重一先生の主要な研究業績としては、『J.S.ミルの政治思想』(木鐸社)、『ジェイムズ•ミル』(研究社出版)、『J.S.ミルとジャマイカ事件』(御茶の水書房)、訳書『評註  ミル自伝』(御茶の水書房)、論文「J.S.ミルの1830年代における思想形成と政治的ジャーナリズム(1)(2)(3)」(『國学院法学』)、「中村敬宇訳『自由之理』(1)(2)(3)」(『國学院法学』))などがあげられる。山下重一先生は、学会員がこれらの研究業績を生かして、それぞれの研究を深めることを切に望んでいたように思われる。


事務局より

ご挨拶

本年4月より、本学会の事務局が大月短期大学より東洋大学に移りました。約10年ぶりの事務局担当で不慣れな点も多数ございますが、少しでも会員の皆様 の便宜となり、円滑な学会運営ができますよう引き続き努力してまいります。皆様方のご協力を賜りますようお願いいたします。

会費納入のお願い

会費未納の方は、本年12月末までに振込をお願いいたします。年会費は6,000円です。なお、2年分(12,000円)以上の未納の場合には、来年3月末の学会誌の送付が停止され、役員選挙の選挙権•被選挙権を失います。さらに、5年分(30,000 円)以上の滞納の場合には、自然退会となります。くれぐれもご注意ください。

理事および会計監査選挙について

役員選挙の日程変更が第167回理事会で承認されました。次回(2018-2019年度役員選出)より、投票締切が改選年度前年の7月下旬に早まります。選挙関連書類は6月上旬に発送予定です。なお、会計監査について、監査や監事の名称も使われておりましたが、今後は会計監査で統一することになりました。

今後の学会運営について

学会誌につきましては、バックナンバーの電子化、学会 HP での閲覧のための作業が進んでおります。また、将来的には「学会通信」「総会•研究大会プログラム」、「部会研究例会案内」などの資料も電子ファイルで提供させていただき、紙媒体での送付を原則として廃止するといった案も検討されておりますこと、お知らせ申し上げます。